特定商取引とは「特定商取引に関する法律(昭和五十一年法律第五十七号)」(以下、「特定商取引法」)において規制を受ける取引形態を指します。特定商取引法は悪質な勧誘等から消費者を守るための法律です。
具体的な取引形態
規制される取引形態は以下の7つです。
- 訪問販売
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消費者の自宅など事業者の店舗以外の場所で対面して行われる取引。事業者の店舗であってもキャッチセールスやアポイントメントセールスで来店している場合は訪問販売に含まれる。
- 電話勧誘販売
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事業者が電話をかけ、その電話において消費者に勧誘をして契約に至る取引。一度電話を切った後に郵便等を用いて契約に至る場合も含まれるほか、消費者に目的を告げずに電話をかけさせたり特に有利な条件で契約できることを告げて電話をかけさせた場合も含まれる。新聞広告等を見て消費者が自発的に電話をかけた場合は、その電話で事業者が勧誘を行ったとしても該当しない。(この場合、通信販売に該当する。)
特定継続的役務提供-
特定の長期間継続して役務(サービス)が提供される取引。具体的には以下の取引。(※本コラム作成時のもの。追加される場合あり。)
- エステティック
- 美容医療
- 語学教室
- 家庭教師
- 学習塾
- 結婚相手紹介サービス
- パソコン教室
- 業務提供誘引販売取引
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物品販売・役務提供の事業(そのあっせんを含む)に従事することで得られる利益で誘引し当該物品や役務提供について契約する取引。「このパソコンを購入してくれたらパソコンを使った仕事を紹介します。」などが典型的な例で「内職商法」「モニター商法」などとも呼ばれる。
- 連鎖販売取引
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物品販売・役務提供の事業で、再販売・受託販売・役務提供(そのあっせんを含む)をする者を、紹介料などの特定利益が得られると誘引し、入会金などの特定負担について契約する取引。「入会金を払えば、以後商会者が入会したときにマージンがもらえる。」などが典型的な例。同様のピラミッド型構造のねずみ講は「無限連鎖講の防止に関する法律」により禁止されている。
- 訪問購入
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事業者が消費者の自宅等に訪れて物品等の購入(買い取り)を行う取引。
- 通信販売
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事業者の新聞やインターネット広告を見た消費者が郵便・電話・インターネット等で申込を行い契約する取引。電話勧誘販売に該当する場合は除く。
規制や民事ルール等
- 訪問販売・電話勧誘販売
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事業者の氏名等の明示
再勧誘の禁止等
書面の交付
禁止行為
行政処分・罰則
契約の申込みの撤回又は契約の解除
過量販売契約の申込みの撤回又は契約の解除
契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し
契約を解除した場合の損害賠償等の額の制限
事業者の行為の差止請求 - 特定継続的役務提供
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書面の交付
誇大広告等の禁止
禁止行為
書類の閲覧等
行政処分・罰則
契約の解除
中途解約
契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し
事業者の行為の差止請求 - 業務提供誘引販売取引
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氏名等の明示
禁止行為
広告の表示
誇大広告等の禁止
未承諾者に対する電子メール広告の提供の禁止
書面の交付
行政処分・罰則
契約の解除
契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し
契約を解除した場合の損害賠償等の額の制限
事業者の行為の差止請求 - 連鎖販売取引
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氏名等の明示
禁止行為
広告の表示
誇大広告等の禁止
未承諾者に対する電子メール広告の提供の禁止
書面の交付
行政処分・罰則
契約の解除
中途解約
契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し
事業者の行為の差止請求 - 訪問購入
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事業者の氏名等の明示
不招請勧誘の禁止
再勧誘の禁止等
書面の交付
物品の引渡しの拒絶に関する告知
禁止行為
第三者への物品の引渡しについての契約の相手方に対する通知
事業者が物品を引き渡した第三者への通知
行政処分・罰則
契約の申込みの撤回又は契約の解除
物品の引渡しの拒絶
契約を解除した場合の損害賠償等の額の制限
事業者の行為の差止請求 - 通信販売
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広告の表示
誇大広告等の禁止
未承諾者に対する電子メール広告の提供の禁止
未承諾者に対するファクシミリ広告の提供の禁止
特定申込みを受ける際の表示
前払式通信販売の承諾等の通知
解除妨害のための不実告知の禁止
契約解除に伴う債務不履行の禁止
顧客の意に反して契約の申込みをさせようとする行為の禁止
行政処分・罰則
契約の申込みの撤回又は契約の解除
契約の申込みの意思表示の取消し
事業者の行為の差止請求
割賦販売法上の特定契約
割賦販売法第35条の3の5では、これらの取引のうち訪問購入・通信販売を除き「特定契約」として定義しています。特定契約に係る個別信用購入あっせんについても様々な規制(加盟店による勧誘行為の調査義務・書面交付義務・クーリングオフ対応など)を受けることとなります。